ヴィンテージ スタインウェイのおはなし:⑤   by 坂上麻紀

引続き,バーのおはなしですが,今度はクロスバーが主役です。演奏者側からはその右側にあるセンターバーも同時にご覧頂くことになります。このピアノではクロスバーもほんの少し曲がっていることがわかります。

ピアノの奥の方からの写真でも,ちょっとピンボケですが,その曲りはご覧頂けると思います。

演奏中センターバーやクロスバーに手を添えると,絶え間ない振動が伝わってきます。また,音の組合せがそうさせるのか,たまに“ビクッ”という強い振動を感じる瞬間もあります。

微妙にひずんだバーからくる鉄骨の弾性はピアノの発声能力を高め,ギャンギャン,ガラガラした汚いアタックノイズをおさえてくれます。

近代ピアノはを主な材料としています。近代ピアノの創成期には鉄の技術がほどよい役割をして,ピアノの発生能力を豊かにしてくれていました。

ハンブルク製ニュー・スタインウェイは一時期,鉄骨材料を硬めの鋳鉄に切り変えるという案を導入しました。

剛直なバーを硬い材料で作ったのですからアタックノイズは激増。その際に発生する弦の張力スパイクが災いして断弦も多発し,技術責任者はクビになったそうです。