ヴィンテージ・スタインウェイのおはなし:⑦   by 坂上麻紀

ここからはピアノの発音に直接は関係ない話題になります。今回は,外から見ることが出来るところに打たれている刻印がテーマです。

下の写真は譜面台を下から支えるミュージック・フレームの裏側に打たれている製造番号です。

次はその横の方に打たれているD 254という刻印。スタインウェイ&サンズではアルファベットを年代表記に使い回していて,Dはその当時には1902年に配当された記号です。

アルファベットの中でもIやO,Qといった数字と紛らわしいものは,用いられないならわしでした。

254はその年の254台目のピアノという意味です。製造番号はピアノがほぼ完成した段階で各個体に与えられました。製造番号が配当される以前,製造工程で各部品がどのピアノのために製造されたものであるのかを特定する目的で与えられた部品の識別番号,それがD 254です。

下の写真はペダルを支えるライヤのステーであるライヤスティックのキー・ベッド底に設けられた穴に入る上端部近くという目立たない箇所に打たれた製造番号で,左右ともにあります。

それ以外の打刻箇所としてはキー・フレーム,キー・スリップ,キー・ブロック(右側),があります。キー・ベッドには製造番号のゴム印が押されています。

これほど多くの刻印やスタンプがあるスタインウェイは珍しいのですが,20世紀初めまでのスタインウェイ&サンズ社ではそうすることが普通だったということなのでしょう。