ヴィンテージ・スタインウェイのおはなし:⑧ 坂上麻紀

ここからはピアノの発音に直接は関係しない金属部品類を取り上げさせて頂きます。今回はやや地味なネジのおはなしになります。

次の写真はラグスクリューと呼ばれるネジで,鉄骨をリムの内側の段差部に固定している大きなネジです。

ラグスクリューというのは頭が六角になった大きな木ネジのことで,ピアノ部品としての固有の名称ではありません。

 この写真でネジの頭の何だかヌメッとした質感がお伝えできているでしょうか? ヌメッとしているわりに肌荒れもあるんですが……。

 もう一枚の方がよかったでしょうか? 実はこのような質感は水銀アマルガム法という何かの金属を水銀に溶かした後,水銀を抜いて金属層を残すメッキ法の跡らしいのです。

昔,歯科治療でアマルガムというのがあったでしょう? あの気持ち悪い 銀の詰め物。でも,歯科治療ではアマルガムを詰めた後,しばらく固く噛み合わせてから口をすすいで終わり,でしたが,クロムメッキではそういうワケには行かず,焼いて水銀を飛ばすという公害発生度満点の“焼着法(やききせほう)”と呼ばれる――仏像に施された金メッキなどの工法と同じ――メッキ法が用いられていました。

何回か重ねてメッキ層を厚くする施工法もあったようです。ごくまれに,古い建築部材の中にもそのような痕跡の見出されるものがあります。

 次の写真はノーズボルト・ナットと呼ばれるもので2箇所に使われています。これの頭にも手の込んだ装飾がされていました。

フルコンなんてお高い品物ですから,多少はゴージャス感!を魅せてくれてもいいですよね!